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入浴法あれこれ

蒸し湯

 むし湯とは、一般的に天然に噴出している温泉蒸気を浴室に導いて行う蒸気浴で「湿式のサウナ」のことをいいます。

 温泉水への入浴と異なり、静水圧の影響がないので心肺への負担が軽いのが特徴です。 また、蒸し湯は発汗を促し新陳代謝が良くなるので、疲労回復のほか神経痛や腰痛などの疾患に効果があります。 温泉蒸気がのどを潤すため、呼吸器疾患にも良いといわれています。

 縦に長い箱の中に水蒸気を引き込み、首だけ出して温まる後生掛温泉(秋田県)の箱むし、床に開いた直径4センチ程の丸い穴から約60度の蒸気が上がり、そこにお尻をあてて温める瀬見温泉(山形県)の痔むし、木製の樋(とい)の中を高温の温泉水が流れ、その温まった樋に腰掛けるなどして患部を温める酸ヶ湯温泉(青森県)のまんじゅうふかし、伏流の熱によって温められた砂に入浴する指宿名物の砂むしなどがあります。

岩盤浴

 火山の熱エネルギーで温まった岩の上で寝ころぶ秋田県玉川温泉の「岩盤浴」。 十和田八幡平国立公園の大自然の中、硫黄の匂いが漂い、噴気をあげる地獄谷、遊歩道脇にも多くの湯治客でにぎわっています。 ラジウムなどを含み放射性のあるマスコミでも騒がれた特別天然記念物の北投石が有名です。

 また、岩の上ではありませんが玉川温泉のすぐ近くにある後生掛温泉にも、やはり地熱を利用した湯治用のオンドル宿舎があり、多くの湯治客が大部屋の中でのんびりと横になって温まっています。

時間湯

 草津温泉(群馬県)に伝わる荒治療「時間湯」は、47度前後の高温、さらに強酸性の湯に集団で3分間入浴する方法です。 危険を伴うため、すべて湯長という指導者の号令の下に行われ、各自が症状にあわせて数回入浴する仕組みになっています。

 時間湯は、湯もみから始まります。 草津節や草津湯もみ唄を歌いながら、長さ3m、幅30cm程の板で7~8分湯をかき回す作業で、湯の温度を下げることと準備運動の意味があります。 入浴前には、のぼせ防止のため頭から20杯ほどの湯をかけます。 つづいて体に5~6杯の湯をかけ、湯長からの合図で湯が揺れると熱さが増すのでゆっくりと静かに入ります。 砂時計できっかり3分入浴するのですが、入浴中も動くと熱さが強まるので、じっとしているのがコツです。

 時間湯は、体に激しい刺激を与え、体のひずみを治す典型的なショック療法であり、事故も起こりやすく危険を伴います。

 久保田元草津分院長は、「心筋梗塞、脳卒中などの疾患のおそれのある人、高齢者や体力の低下している人は避けたほうがいい。 脱水にも注意が必要」と話しています。

冷泉浴

 時間浴とは反対に、飛び上がるほどに冷たい温泉に入るのが冷泉浴です。 この入浴法も厳しい刺激療法であるため、高温浴同様に体への負担が強いため、周到な注意が欠かせません。

 武田信玄の隠し湯として、また放射能泉として有名な増富温泉(山梨県)や寒の地獄温泉(大分県)などがあります。

 寒の地獄温泉はかつて九州大学のグループが、慢性関節リウマチの治療に用いたこともありましたが、最近は、アトピー性皮膚炎、乾癬、水虫などの皮膚病の治療に入浴する人が多いそうです。

ぬる湯・持続湯

 不感温度浴(34~37度)、微温浴(37~39度)のぬるい湯への長時間入浴を「ぬる湯」「持続湯」といいます。
 冷たくも温かくもない程度の湯であり、発汗やエネルギー代謝量も少なく体の負担が軽いことに加え、心から温まります。

 さらに、副交感神経の働きを優位にして、心身をリラックスさせる効果があり、長時間はいるために温泉成分が呼吸器や皮膚からより多く吸収されるという利点もあります。
 福島県の微温湯(ぬるゆ)温泉や青森県の谷地温泉などがあります。

打たせ湯

 温泉水を落下させ、体に当てるのが打たせ湯です。 水圧によるマッサージに、温熱効果も加わり、肩こり、腰痛、筋肉の凝りや痛みに効果があります。 全国各地の温泉に、太さ細さ、落差、湯の量、温度が異なるさまざまな打たせ湯があります。

泥湯(鉱泥浴)

 火山性の泥(ファンゴ)、水底に沈んだ植物が変化した泥炭(モール)、海泥などが溶けた湯が「泥湯」と呼ばれるもので、泥湯へ入浴することを鉱泥浴(こうでいよく)といいます。 この温泉成分を含んだ泥の中に全身をつける方法のほか、その鉱泥を湿布状にして患部に用いる「パック美容法」「パック療法」があります。

 全身入浴法では、泥による保温効果とともに、泥に含まれる有機物やミネラルが肌に直接作用し、さまざまな効能を与えてくれます。 20~30分間ゆっくり浸かるのが正しい入浴法ですが、泥は水よりも重いため、ふつうの温泉に入るより一般に身体に負担がかかります。 心肺への負担が相対的に高いことを知っておく必要があります。

 その点、湿布状にして用いる方法なら安全です。泥を温めて患部に湿布するもので、喘息の治療などにも用いられています。

 泥湯では別府八湯のひとつ明礬温泉(大分県)の別府温泉保養ランド後生掛温泉(秋田県)などが有名であり、鉱泥湿布で呼吸器疾患(おもに喘息)、腰痛、膝関節症などの治療を行っているのが世界有数の放射能泉として有名な鳥取県の三朝温泉(みささおんせん)です。


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