リスクを伴う熱い湯
高温浴の人体への影響
厚生労働省の人口動態統計による「浴槽内での水死」は毎年3000人を越えており、その中でも65歳以上の高齢者の割合が8割を占めています。 また、入浴後に死亡したケースも含めるとお風呂に伴う死者は1万人を越えているのです。
特徴としては、11月から3月にかけての寒い時期に多く、主な死因は心筋梗塞、脳卒中(脳梗塞、脳出血)、意識障害による溺死で、これらは血圧と血流の変化が大きく関与しています。
42度以上の入浴を高温浴といい、身体への影響が強く事故の危険性が伴います。 42度での入浴を想定した血圧の変化とそれに伴って起こりやすい疾患を見てみましょう。
脱衣所は寒いことが多い。 衣服を脱ぐと「寒さ」のために末梢神経が収縮して血圧が上がります。 湯に入ると、交感神経が興奮してさらに血圧が上昇します。 温度が高いほど血圧の変動は顕著です。 ここで、脳内の血管が急激な血圧上昇に耐え切れず破れると脳出血を起こします。 脳症による意識障害によって、湯の中に倒れこんで溺死することもあります。 特に高血圧の人は気をつけましょう。
しばらく湯に浸かり身体が温まると、末梢神経の血管が広がって血圧が下がります。 血流の流れは緩やかになり、血栓が血管に詰まりやすくなります。 心筋梗塞や脳梗塞が起きやすくなるわけです。 また、血流量が減少するため、脳貧血で意識障害に陥り溺死することもあります。
入浴と水分補給
湯の温度が高いと血液が固まりやすくなる一方で、血の塊を溶かす働きも低下します。 汗をかき、血液中の水分が失われて血栓が生じやすくもなります。 熱い湯は血圧の変動も激しいうえ、のぼせも起きやすいのです。
特に老人の入浴では、38~40度が望ましく、冬場でも41度までがよいでしょう。 長湯はのぼせ→溺死につながるので、1回の入浴は5~7分程度が良く、いったん湯から出て、身体を洗ったり休んだりしてから再入浴するのがよいでしょう。 さらに入浴後の水分補給もきわめて重要です。
のぼせる心配のないぬるい湯に長く入る長時間微温浴は、身体の芯まで温まり、副交感神経の働きを優位にしてリラックスさせる効果があります。
入浴中に意識を失ったら
- 湯の中から身体を上げ、口を水面上に出して湯船の栓を抜く
- 救急車を呼び、可能なら身体を浴槽から搬出して足をやや高く上げ、頭を低くして寝かせる(脳の虚血に対応)
- 心臓が止まっていたらマッサージ、水を飲んでいたら吐かせるなどの救急措置を
安全な入浴のポイント
- 飲酒後は危険! 食事直後の入浴も避ける
- 入浴前に、ひと声かける
- 脱衣所、浴室を暖かく
- 42度以上の熱い湯を避ける
- かけ湯をして温度に身体を慣らす(下半身から上半身へ)
- 首までどっぷり浸からずに肩を出すか、浅い湯で寝浴を
- あがる時に急に立ち上がらない
- 湯冷め防止に水滴をよくふき取る
- 水分補給をかかさずに